任意整理のメリットデメリット、裁判所不要だが弁護士に任せよ。借金地獄からの脱出ルートを徹底解説

任意整理のメリットデメリット、裁判所不要だが弁護士に任せよ。借金地獄からの脱出ルートを徹底解説
任意整理のメリットデメリット、裁判所不要だが弁護士に任せよ。借金地獄からの脱出ルートを徹底解説
編集部/元・タジュウ

任意整理のメリットデメリット、弁護士などの専門家に任せよう。

皆さん、こんにちは! 元タジュウです。

これまで、法的債務整理の概要と自己破産・個人再生の詳細を私の経験に基づいて解説して参りました。

さて復習で、法的債務整理には大きく分けて

  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産
  • 特定調停

の四つがあるとご解説しました。それぞれどういったものかを一番最初の稿で概要をご説明し、自己破産・個人再生については紙数を割いて(本当の原稿用紙ではありませんが)細かくご説明しました。

さて自己破産・個人再生については元多重債務者として実際にくぐり抜けているので微に入り細に入りご解説出来ました! 酸いも甘いも含め・・・(ほとんど酸いばかりか)。

酸いも甘いも

一方任意整理です。法的債務整理に入る際、こちらもどういったものか子細に検討致しました。が、私の状況ではパスだったので、実際には体験しておりません。

状況によってはかなり用いられていると聞いており、自己破産と比較することでその性質は十分わきまえておりますので、こちらもできる限り解説してみたいと思います!

なお、自己破産のまとめの記事を先に読んで頂いている前提で書き進めております(自己破産と比較しながらご紹介するため)。

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ありがとう

任意整理とは?

まず自己破産は財産を一切放棄してその代わりに借金もゼロにするというものです。一気にゼロになるのである意味法的債務整理のキングです。

個人再生は借金を大幅に圧縮して返済。その代わり家等の財産をキープしてヨイ。という自己破産のバリエーションの一つと考えて良い仕組みです。

この二つは法的枠組みがかなりビシッと整備されており、それに基づいて裁判所主導で借金おさらばを進める仕組みです。

では任意整理は? 法的債務整理の目玉の一つとして挙げられていますが、上記の二つとは性質が違います。即ち、基本裁判所は絡まず、債権者と債務者が「直接 / 相対・一対一で」交渉して、随意に・・・お互いが納得行くよう借金・金利を調整し、改めて返済するというものです。相対ですよ。英語だとワン・オン・ワンです。

一対一

任意整理のメリットとデメリット

以下、自己破産と比べながら解説を進めさせて頂きます。

任意整理のメリット

とにかく早い! お手軽!!

早いお手軽

これに尽きます。自己破産では色々と煩瑣な書類提出があったり、管財人による財産チェック・行状調査(監視)があり、裁判所での最終決着までにかなりの時間が掛かります。最短で半年ほど、場合により一年。私も決着が付くまで(途中で進め方をしくったので)一年弱。

多重債務の最大の苦しみは、実はかなり「メンタル」的なものです。肩にずっしり高金利の借金に取り憑かれている・・・。これから一刻も早く逃れたい。ここで、自己破産も時間が掛かる割に100%成立するとは言い切れない。

一方任意整理はお手軽です。裁判所への面倒な & 膨大な量の書類提出はなく、管財人(生殺与奪の権を握る「神」)も登場しません。言うと、債権者と書面一枚(三枚かもしれませんが)、趣旨を書いてサインしてオワリです。複数いたら基本その分契約(再契約)を交わさなくてはなりませんが・・・。

法的な細かい文面は捨象してこんな感じです

状況

  • 債権者
    ニコニコ銀行
  • 債務者
    田中タジュ子
  • 借金元本
    100万円
  • 利息
    年利12%

事後

  • 債権者
    ニコニコ銀行
  • 債務者
    田中タジュ子
  • 借金元本
    50万円
  • 利息
    0
  • 月額5万円で返済すること

これだけ。相手が応じれば書面の作成やサインがあるので少しは時間が掛かりますが、一週間で終わるかもしれません。返済にはもちろん時間が掛かります。

スピーディでお手軽

スピーディでお手軽~!

 

任意整理のデメリット

相手と随意に交渉して条件を再設定(再契約)するもの、ですので・・・相手次第です。応じないこともあるかもしれません。

また仮に応じてくれたとしても自己破産のようにゼロになることはありません。圧縮金額も1/4ぐらいにしてくれたら嬉しいが・・・半分が最大限の譲歩だったり。色々。

ただ、債権者の方も「何も返ってこないよりはるかにマシ」ということで金利だけはゼロにしてくれたり、少しは元本も減らしてくれたりと案外応じてくれる場合も多いそうです。一方で任意整理には応じない! という金融機関(銀行より個人ローンが本業のサラ金でしょうか)もあるようですが・・・。ケース・バイ・ケースですね。

圧縮金額

どういった人に向いているか?

私の場合、複数の金融機関(カードローン)・サラ金から借り入れしていた「普通の多重債務者」でした。普通の多重債務者って何だ・・・。ざっくり、一社当たり100-200万円 + 高金利が6-7本ぐらいで1,000万円オーバー。給料もさほど高くなく、法的債務整理に入る時点で事実上クビになり無職。これでは任意整理で個々に金利カット・元本80%へダウンとかしてもらっても何ともなりません。選択肢は自己破産か個人再生しかありませんでした。

つまり、800~1,500万円ぐらいで雪だるま(英語だとスノーボールです)状態になっている「普通の(ガチの?)」多重債務者には任務整理はあまり向いていません。是非自己破産を。

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さて、もう少し症状が軽い患者さんを考えてみます。二社で300万円 + 高金利、とか。今の給与では金利を返すのが精一杯で元本が減りそうにない・・・。ただとにかく早く楽になりたい。自己破産は時間が掛かりすぎる。或いは、ギャンプルでこさえた借金なので自己破産の免責不許可要件が怖い。或いは家があるんで自己破産だと取られちゃう。300万円とは引き換えられない・・・が個人再生はメッチャ時間が掛かる(詳しくはそちらのまとめの記事をお読み下さい!)。

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なら、任意整理がお手軽だ。300万円が250ぐらいに減って金利ゼロになったら御の字で、これなら返せる。向こうも嬉しかろ。

軽症?重症?トリアージ

弁護士・司法書士の起用について

任意整理の交渉は当然債務者自身でも(本当に直に)出来ます。しかしながら、直で交渉すると「なめられて」応じてくれないかもしれません。

なら、第三者の弁護士や司法書士を立てて代理交渉してもらうことです。フィーも、自己破産ほど時間・手間が掛からないのでそれよりは低いはずです。例えば一件まとまったら圧縮額の1/10とか。30万減らしてくれたらそれについては3万円。とか。相場については事務所でまちまちかと思いますが、そう高くないはずです。契約書の作成もやってくれますし、何より交渉・手続きに慣れています。代理でサインもしてくれたり(代理権を最初に一任するので)。つまり、金融機関のちょっと強面の債権回収担当者と会ってギロっと睨まれる必要もありません。是非プロの起用を! 任意整理専門でなくとも、メインにしていると謳っている老舗や大手がいいですね。

弁護士や司法書士

ちなみに商売としての法律稼業ですが、任意整理は「ターンオーバーがいい」(早いので一回のフィーは低くても数をこなせば儲かる)ということで案外お得な仕事のようです。この点もクライアントと弁護士・司法書士などプロの間でウィン・ウィンなのか。

経験則で、この金融機関はこういった額ならここまでは応じる、とか勘所もあるでしょう。相談・検討してみる甲斐はあります。

私の弁護士の場合、自己破産・個人再生をメインにしており任務整理はあまり得意ではないようでした(対裁判所の手続きを本業としている)。金利カットぐらいは言えば応じるかもしれませんが・・・とのことだったので私は任意整理はパス。

マックス300万ぐらいで、2~3社。スピード重視! の方は任務整理もありかと。

ゲーム理論

以上が任務整理のまとめです。それ自体簡単・お手軽なので説明も自己破産より少ないです。

さて以下、少しアカデミック(?)なお話をさせて頂きます。ご興味があれば参考でお目通しを(ここまででも構いません)。

アカデミック(?)なお話

戦略的な話をします。任意整理の交渉の成功確率を上げるには?

法的債務整理は一つがダメだったら別のに移っても構いません。任意整理と他のを組み合わせる(自己破産はそれで全て終わるので個人再生でしょう)ということも可能なのかもしれません。別に問題無いはずです。

さて、交渉術ですが「任意整理に応じないと自己破産に行くしかない」とちらつかせる(?)のもありかと思います。例で言いますと、あんたの所には200万あるが、任意整理で100万まで削ってくれんか? と交渉しているとします。ここで、「そう明言はせずとも」応じないなら時間は掛かるが自己破産しかないんで・・・。と思わせる。或いは金融機関の方もこちらから言わずとも「逆算」してそう承知しているかもしれません。なら、全面戦争の自己破産に行かれるよりは任意整理の手打ちで。

こう書いていてゲーム理論(逆算でお互いが相手の手を読む)やキューバ・ミサイル危機を思い出しました。核戦争になるよりはお互いに手打ち(ミサイルをお互いに撤去)で。大げさか。

キューバ・ミサイル危機

何にせよ交渉ごとですので、交渉戦術自体も起用した専門家に相談を! 海千山千の方ならそういった手管も織り込み済みかもしれませんが・・・。

任意整理の立ち位置、法的債務整理「法的」の意味

一連の本記事は、法的債務整理に入る際どの枠組みを用いるか検討する際のご参考にして頂くことが大きな目的の一つとなっております。

ここで、理解を深めるために自己破産と任意整理がどうリーガル的に違うのか、考えてみます。

これら全てを引っくるめて「法的債務整理」と読んでいます。大きなカテゴリーとしてはそう、と言いますか。

さて一口で「法的」と言ってもその意味合いがかなり違います。

自己破産と個人再生の場合、裁判所主幹で「債務者救済のための枠組み」がキッチリ制定されています。これはまさに法的債務整理。もちろん債権者のことも考慮するのですが(被害者はそちらなので)、条件を満たして決定が下ったら双方に有無を言わせません。

一方任意整理の場合、そういうった枠組みがあるわけではありません。ある種、普通のビジネスの契約に似ています。当事者同士が条件に納得してOKなら契約を交わす。基本裁判所は何も介入しない。これが法的と言うなら法的。但し、自己破産で謂う法的とはかなり意味が違います。

では、任意整理では裁判所は登場しないのか? タジュ子が50万円は月額5万 / 利子ナシで返す、と相手の金融機関と約束(書面による相対の契約ですね)したのにそれを破ったら、契約不履行という感じで、相手が(何度か督促はするのでしょうがそれでも無視していたら)裁判所に持ち込みます。こういった出番はあり得ます。そこでタジュ子の方が悪いとなったら履行を強制させられることになります。給与口座を差し押さえられたり、最近買ったおニューの任天堂かソニーのゲーム・コンソールを差し押さえて換金したり?(後者は冗談ですよ。車はあり得ます)。

このように「法的」というキーワードに着目して違いを踏まえておくと、自己破産 vs. 任意整理の意思決定で仕組みを理解してから踏み切ることが出来るので、このように意見を述べさせて頂きました。

ちなみに特定調停。法的を考えるとさらにややこしくなるのであまり触れたくないのですが・・・念のため。これも基本は任意整理と同じで相対の交渉なのですが、司会者・調整役のような感じで裁判所が関与します。いきなり裁判所がガンッと何かを押しつけることはないので、初めから裁判所が絡むものの自己破産の法的とは意味が違い、こちらも任意整理の法的寄りです。普通使うのは任意整理ですので、特定調停についてはそういうものもある、という理解に留めておいて下さい。

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任意整理についてのまとめ

私のような「普通の多重債務者」で任意整理で少し削ったぐらいではどうにもならない方は自己破産で。真の意味の「法的」枠組みで裁判所にガツンと消してもらいましょう。

金利カットしてもらって元本が少しでも減れば何とかなりそう・・・という比較的軽症の多重債務者の方は任意整理も検討。交渉がうまく行かなかったら、その時点で自己破産へ行ってもいいですね。ここら辺は個々の状況が違うと思いますので、是非まず弁護士・司法書士などの専門家の方と相談して下さい!

まず弁護士・司法書士などの専門家の方と相談して下さい!

この記事を書いたのは
編集部キャップ/元・タジュウ
編集部キャップ/元・タジュウ
日本国内某一流大学を卒業後、米国一流校でMBAをトップクラスの成績で取得。Chartered Financial Analyst, CFA/日本証券アナリスト協会認定アナリスト, CMA取得済み。金融に関しての知識は世界トップクラス。ネイティブ並みの英語とタイ語能力を有す。大手町大手監査法人でM&Aアドバイザー職を経て右往曲折(紆余だけでなく。詳細は記事をご覧あれ)。現在は債務整理中央事務局で編集キャップとして活動中。コップンカップ!
私が監修しました
宮地祐樹
ひかり総合法律事務所
宮地祐樹 弁護士
所属:日本弁護士連合会/第二東京弁護士会/日本スポーツ法学会会員。調査案件:ベルマーレコンプライアンス委員会委員。経歴:早稲田実業学校高等部/早稲田大学法学部/北海道大学法科大学院/あさひ法律事務所。元Jリーグ下部組織でのプレー経験がある法曹界では珍しい異色の経歴を持つ。好きな色は青。幼少期から体育会系の世界で揉まれ育ち、人情に厚いながらも冷静沈着な仕事のスタイルが好評を得ている。訴訟案件を多く抱えながらも交渉案件も得意とし、日々、金融機関との交渉に励んでいる。