特定調停のメリットデメリット目立たない脇役だけど債務整理のひとつです

特定調停のメリットデメリット目立たない脇役だけど債務整理のひとつです
特定調停のメリットデメリット目立たない脇役だけど債務整理のひとつです
編集部/元・タジュウ

特定調停: 一体何を「調停」してるんだ?

皆さん、こんにちは! 元アル中(キャバ中)& 大型多重債務者の元・タジュウです。

免責不許可事由が怖く個人再生にしたが、つっかえて失敗。任意整理も検討したが額的にそれでは無理。最後必殺技の自己破産で何とか借金を帳消しにしてもらった・・・。こういった法的債務整理のあらゆる側面を検討し、体験した「債務整理のキング」がこの私です。

そんなこと誇ることではナイ!

が、このように本当に実体験していますので、せめてもの罪滅ぼしでライターとして法的債務整理の諸側面を丁寧に、面白くご解説してなるべく有用な情報を皆様に提供しよう、と頑張っています。

提供します

さて、法的債務整理の三本柱は申し上げました自己破産・個人再生・任意整理ですが、ちょっと目立たない脇役だけど気になる「特定調停」という仕組みが御座います。

個人再生と自己破産は実際に自分で体験しました。なのでリアルに書けます。

任意整理も細かく検討したので(着手はしませんでしたが)書けます。

ここで「特定調停」についてはあまり知らず、検討もしませんでした。私の弁護士も特に触れず。が、一応あるんで今回研究してみました。

三本柱より「中途半端」で使い勝手が悪いだろう、とは先に結論が出ています。しかしながら、そういうものがあるので、皆様と一緒に「どう中途半端」なのか考えてみようと思いました。滅多に使わないにしろ、何たるかを知っておいてもヨイ、とは思います。

実際に制度としてはあるもののあまり使われていないみたいです。

Wikiの正式な説明がまずこちら

私も考察する前にこちらを読みましたが、頭が痛くなります・・・。

また、自己破産及び任意整理と対比してご解説したいので、この二つに関する私の記事も是非先にお読み下さい:

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調停、って?

まずそもそも論を考えてみるのがいつもの私の癖です。法的債務整理は一旦措いて「調停」って何よ、これから考えてみます。

イスラエルとパレスチナの戦争は英字新聞で毎日追っておりますが、とにかく痛ましい。

元々ユダヤとアラブは別に仲が悪くはありませんでした。旧約聖書の頃はキリスト教も含め「同根」の絶対神を崇める宗教だったのかもしれません(預言者もいたりして似てます)。

それが、ユダヤのメシアが唯一なのか、イスラムのアラーが唯一なのか、こういう解決の付かない問題で痛ましい争いが起こっている。

エルサレムの地は元々ユダヤのものだ! いや、先にアラブ人が住んでたのに無理矢理乗り込んできたのはそっちだ! という解決のつかないような言い合いで紛糾しています。別に双方とも本来は平和の民なのでどちらが悪い、ということは決してないかと思います。

イスラエルとパレスチナの戦争

それを今米国が「調停」しようとしている。ウクライナもそういった感があります。が、中々調停にならない。どっちも譲らないから・・・。

と、真面目な話題から始めてみました。でもこれでは普通過ぎて面白くないので、「中二病」の例で!

中二の「しずか」と同じクラスの「ジャイ子」を考えます。キャンディキャンディの人形をめぐって大げんかをしています。

しずかの言い分としては元々のその人形は私のものだった。

ジャイ子の言い分としては、放課後気付いたらそこら辺に放置してあった。誰のモノでもなく、拾ったのはあたしなんであたしのモノ。しずか、自分のものだって証明出来る?

争っている二人が平行線なので、何とも解決出来ません。当人同士では髪のひっつかみ合いをして人形を引っ張り合ってもどうにもならない。

ここで、第三者が出てくる。その喧嘩、私に免じて「手打ち」にしないか・・・。ヤクザみたいですが!

ここで、第三者による「調停」にも二種類ある、ということをこの例でまずお示ししたい。

まず、その第三者が単に客観的に相談にのって、当事者二人の妥結点を見いだしてやろうといている「だけ」、というのが一つ。今の中東におけるアメリカもそれっぽい。

もう一つは、その第三者が絶大な権限を持っており、双方の言い分は聞くが最後はその第三者が決定して「結論・行動を強制する」というもの。

両方「調停」なんですが、かなり違う。

二人の友人であるのび太が、シェアしたら(一日おきに人形を渡す)、とかもう一個似た人形をどっかで皆でお金を出して買ったら、とか色々提案する。これも調停。だがのび太が「こうしろ」と決めることは出来ない。飽くまで解決策を提案してなだめるだけ。それで女子が二人が妥協点を見いだして仲直り出来たらいいのですが・・・。必ずしもそうはならず、大人になっても人形のことで永遠に争う可能性もある・・・。

強面の中年女性教師

一方、担任の強面の中年女性教師が出てくるとします。二人の言い分は聞くが「コワい」し内申(成績)も握っているので、最終的にこのおばさんが決めたことには二人とも従わなくてはならない。元々しずかのものだろう、とこの教師が言えば人形はしずかの手に。いや、拾ったジャイ子のものだろう、そちらの方が正しい! と判断を下せばジャイ子のものに。

このように、調停といってもその第三者が単にオブザーバーなのか、絶対的な権力者なのかで決定的に違います。

裁判所は神

もう少し一般論を続けます。人形の話では無くリーガルに近寄っては来ました。

裁判所とは、その性質上「後者」です。裁判が何であれ、セクハラでも窃盗でも殺人事件(刑事寄り)でも契約不履行や詐欺まがいや借金問題(民事寄り)でも・・・。双方の話し合いで解決出来ない時に、国家・警察力をバックにした絶大な権力者として裁判所が登場する。

公平を期するために裁判所・裁判官は双方の言い分を一通り聞きます。が、最後「ガツン」とこっちの言い分が正しい、こうしろ、いくら払え、そちは監獄行きだ! と有無を言わさず決定し強制します。

のび太ではなく、中年の女教師がソレです。裁判所とは案件・事件の性質に関わらずそういったものです。ある種の神である。

各種法的債務整理の枠組み(違い)

では、特定調停が何故「中途半端」なのか、「変」なのかをこの観点で考えてみます。すると、Wikiに書いてある小難しい解説よりも、その何たるかが分かるかと思います!

まず法的債務整理のスターである任意整理と自己破産、これらに対する神である裁判所の関わり方を考えます。その後対比して特定調停を。

なお、ここでは個人再生も性質的に自己破産と似たものとして割愛致します。

任意整理

任意整理とは、債権者と債務者が「直接」交渉して借金の額・金利条件を交渉して貸借契約を結び直す、というものです。今の額・金利だと返せないが、少し緩和してくれたらきっちち返す! と債務者が約束し、債権者も全然返ってこないよりはいっか・・・と我慢するというものです。

500万円あって15%を400万円の5%にする、とか300万円の0%にする、とか巻き直しの条件(交渉)は当事者 = 二者同士の自由。対面でお互いに交渉してまとまればそれで!

ここで、所謂「第三者」は出てきません。飽くまで二者の交渉です。

弁護士が債務者の代理で交渉をしているとします。しかしこの弁護士は債務者側の代弁者なので「第三者」ではありません。サイドが二つ(だけ)あり、その一方についているプレーヤーが他にもいる、というだけ。

なので、第三者としての裁判所は登場しません。

登場するとしたら、巻き直した契約についてまた滞納・・・とかの違反があって債権者が裁判所に持ち込んだ場合です。ここでは絶対的な権力者として裁判所が登場する可能性はあります。

が、基本任意整理は二者の話し合いで「調停」する第三者は出てきません。

自己破産

こちらは絶対的な権力者としての裁判所が登場します。

債権者側か債務者側がイニシアチブを取り、裁判所に持ち込まれます。

債権者が言う場合は、返してくれないのでせめて今ある財産を全てぶちとってやりたい。、

債務者が言う場合は、返しきれないので返せる分だけ今の財産で返すが、後は帳消しにして欲しい。

事実上、個人の破産手続きでは債務者側から申請する場合がほとんどでしょう。

さて、ここで裁判所の役割。双方の言い分を一通り聞いて「調停」するんですが・・・

調停には二つあると申し上げました。ただオブザーザーとして話を聞いて当事者同士の合意に「導く・促す」(だけ)の場合が一つ。のび太型調停です。

さて他方。お互いの言い分は聞くが、最後絶対的な権力者が「ガン」と決めて双方に有無を言わせず強制する場合。女教師型調停です。

自己破産(及び個人再生)については後者です。お互いに言い分はあろうが、神である第三者が決めたらもうその通りにするだけ。

このように、自己破産・個人再生・任意整理(場合により特定調停も)と三本の柱、或いは三本 + おまけ一個と並べられますが、借金の整理でも枠組みやそのプロセスに大きな違いがあり、かなり違ったものと考えられます。

さて、裁判所のそもそもの性質を考えると自己破産におけるその役割は「本来のそれ」と言えます。どちらにも有無を言わさせない神だ、と・・・。

特定調停

さて、特定調停です。これが何とも中途半端で、位置付け的に奇妙。

この特定調停の調停は女教師型(絶対的)ではなくのび太型(単なるオブザーバー的)です。少なくとも、私が調べて考えてみたところではそうです。

まず交渉としては任意整理と似ており、基本は当事者二者が話し合ってどうするか決める。

この話し合いの際、のび太型の調停者も女教師型の調停者もいないのが任意整理。当事者だけで勝手に話を付けます! と。それだとしずかとジャイ子のように平行線になってまとまらない場合もあるんでしょうが・・・。

特定調停は、この任意整理に「強制力がほとんど無い」第三者の調停者の役割を裁判所が買って出よう、というものです。

任意整理にのび太を加えたのが特定調停。但し、「場」は一応裁判所なのでフォーマルではある。

第三者の裁判所が双方の意見を聞き、客観的な第三者として「ゆるい調停」はしてくれる。いないより話がスムーズに進むかもしれない。ある種「司会」のようなものでしょうか・・・。

500万円の15%を、債権者の方は400万円の15%までしか譲れない。債務者の方はせめて300万円の0%にして欲しい。任意整理の交渉だとここで平行線になってしまった。ここで同じことなんだが「一応」のび太型の調停者を入れて、債務者の財産状況等も見て、間の350万の10%ぐらいでどうよ? すると、裁判官殿がそう言うなら・・・と債権者もついにしぶしぶ折れる(調停者も権限は振るわないが居ないより良かった?)・・・。と、なることを期待して? という感じ菜恩か。

でも飽くまで当事者同士の話合いなので、場が裁判所だろうが何だろうが折り合いがつかなければつかない。それは任意整理と同じ。

当事者同士の話合い

自己破産ですと、最後は裁判所がバシッと「こうせい!」と奉行所のようにお触れを出します。これには逆らえない。

これがお奉行所である裁判所の本当の姿です。コワい、ツヨい、だけで善し悪しは別に。本当の調停をする。最後は無理矢理。

ところがこの特定調停。本来の裁判所がやるべき裁断の調停をせず、やんわり調停をするだけだから「特定」とか意味不明の枕詞がついているのか。

なら、本来裁判所がするべきことをせず、曖昧な立ち位置なので「変」です。この稿の結論はコレ。

何故登場したのか?

Wikiを読んでおりますと、まず他の三つと比べて比較的新しい枠組みだと分かります。私が度外視していたのもこのせいかもしれません。

では、お国が何故こういう本来の裁判所が担当するべきではないような場を制定したのか。

お国或いは裁判所も「当局」ということで威張りはしますが、国民のために色々便宜を図ろう、という使命感もあります。

特定調停が無かった頃は、完全に当事者同士でやっとけ = 任意整理 or 有無を言わさずバサッと両断してやる = 自己破産(個人再生)という「両極端」しかありませんでした。

全く国が手を出さないか、無理矢理お裁きを出すか。どっちにしても極端過ぎる、と考えたのかもしれません。

法的債務整理というものは、債権者の利権にも気を払いつつ借金で苦しんでいる人間を救ってやろう、という慈悲深い制度です。任意整理には関与しない。裁判所が出てくるのは自己破産だけ。もう少し「中間的」な制度を作って国家としてオプションを増やしてやろうか・・・と思い至ったのかもしれません。

それはそれでいい。が、本来の調停をしないので何だか中途半端なものになってしまった・・・、ようだ。

こういうことではないかな、と私としては捉えています。

使えるのか?

利用頻度についてWikiを読んでると、登場した当時は「目新しい(?)」ので案外利用されていたが、段々下火になってきているようです。

何故でしょうか。中途半端であまり裁判所の意味がナイ気もするからでしょう。

任意整理の利点としては、当事者同士なので「まとまれば早い!」という点があります。その代わりまとまらないかも。

自己破産の利点としては、財産・素行調査等で時間・手間は任意整理より掛かるが、有無を言わさず借金がゼロになっちゃう、という点が挙げられます。面倒なんですが。

事実上任意整理なんだけど・・・なんとなく格式のあるフォーマルな場で、一応裁判官にもやんわり見守って貰ったり意見を貰える・・・方がいいなら特定調停、なんでしょうか。

いや、中途半端過ぎる。

法的債務整理の手段を選択する上で、私なりのディシジョン・ルールをご提示します:

  • 額が対したことはなく、ちょっと減れば返せそう。相手もある程度は応じそうだな。早く楽になりたいのでスピード命、なら「任意整理」。
  • 私のように任意整理でちょっと減らして貰っても何ともならない。とにかくゼロにして再スタートしたい、なら面倒でも「自己破産」(家とか失いたくない財産があるなら少し柔らかい個人再生)。

こうです。弁護士先生にも相談して欲しいのですが、状況を考えると自ずからやることは決まってきます。

ここで、中途半端な特定調停というオプションはあるのか?

まず、「任意整理」寄りの方向性で、柔らかいがフォーマルな調停者・司会が居た方がピシッと話がまとまりそう、というならこれもありかもしれません。こちらもどうするかは弁護士先生とまず相談です。その代わり、自己破産ほどではないかもしれませんが任意整理より時間・手間・多少のコストが掛かります。

どれも一長一短ですね。キングは自己破産で、場合により即決なら任意整理ですが、脇役で特定調停ってものもある、と把握しておいても損ではありません。

私のお勧めは、裁判所に持ち込むならまどろっこしい特定調停より自己破産で。持ち込まないなら弁護士先生に任せて相対の任意整理で。

まとめ

  • 「調停」って言っても一般に二つある。単なるオブザーバーか最後裁断を下す奉行所か。
  • 任意整理には調停者は基本居ない。
  • 自己破産には恐ろしい権限を持つ奉行所が居る。
  • 特定調停は任意整理と性質上同じ(相対)だが、オブザーバー的な裁判所が体裁だけはフォーマルな感じで出てくる。
  • 特定調停は、この意味で本来の裁判所の役割を果たさないので変。
  • だから人気も落ちてきた。
  • 法的債務整理のオプションとして、知っておいてもいいが使う可能性は低いでしょう。

という感じですね。お国、或いは裁判所の新しい試みという点では評価出来ます。

が、これを最初に起草した人は「おかしい部分がある」と分かってて作ったのか・・・。あまり分かってなかったのではないかと言う気もします。

 

この記事を書いたのは
編集部キャップ/元・タジュウ
編集部キャップ/元・タジュウ
日本国内某一流大学を卒業後、米国一流校でMBAをトップクラスの成績で取得。Chartered Financial Analyst, CFA/日本証券アナリスト協会認定アナリスト, CMA取得済み。金融に関しての知識は世界トップクラス。ネイティブ並みの英語とタイ語能力を有す。大手町大手監査法人でM&Aアドバイザー職を経て右往曲折(紆余だけでなく。詳細は記事をご覧あれ)。現在は債務整理中央事務局で編集キャップとして活動中。コップンカップ!
私が監修しました
川﨑純一
司法書士法人アストレックス
川﨑純一 司法書士
平成20年に20代で司法書士登録、15年以上の業務歴がある司法書士。債務整理や借金等の消滅時効援用の相談も得意としている。