悪名高いM&Aと「勝者の呪い」お金の哲学雑学シリーズ【5】金融知識トップの元エリートによるシリーズコラム

悪名高いM&Aと「勝者の呪い」お金の哲学雑学シリーズ【5】金融知識トップの元エリートによるシリーズコラム
悪名高いM&Aと「勝者の呪い」お金の哲学雑学シリーズ【5】金融知識トップの元エリートによるシリーズコラム
金融に関する知識と教養は世界トップクラス。MBA取得元エリートで「現?」な「元・タジュウ」が解説する「お金の哲学雑学シリーズ」さぁ、お金について学ぼうぜ!
編集部/元・タジュウ

皆さん、こんにちは! 元・タジュウです。

法的債務整理について色々な切り口で分析し、なるべく分かり易く & 面白くご解説させて頂いております。

一連の記事におけるメインは私の「多重債務人生三部作」です。エリート投資銀行マンを目指して見事脱落し、アル中(キャバ中)の多重債務者になり、ようやく自己破産で切り抜けたという情けないストーリー。

アル中

その過程で、法的債務整理について感覚的にも詳しく理解出来たため、恥を忍んでぶっちゃけトークをご提供しています。

もう一つその転落人生で身に染みてよく理解したこと。悪名高い「投資銀行業務」です。特にM&Aと呼ばれるもの、つまり企業買収(アドバイス)。米国のウォールストリートでも本邦の大手町でも、企業の売買を斡旋して高額のフィーを取り、そのエリート社員達はとんでもない高給取りに。企業の所有権を「移す(横流しする)」だけで実質がないので「虚業」なんでは? と囁かれています。いや、声高にそう言ってる人も多い。

大手町

そのエリートになりそこなった私が、今回はそのM&Aについて語らせて頂きたいと思います。三部作のエピソード(スターウォーズみたいな?)でもありますので、そちらも事前にお読み頂けるとより笑えるかもしれません。

単なるマネーゲームなのか? という点で借金や法的債務整理にも間接的に関係しているかと思います。

客観的に結論を先に申し上げますと、マネーゲームかもしれないが、全く意味がナイとも言えない。という感じです。否定寄りですが、全面的には否定していません。脱落したから負け惜しみで否定寄りなのか? と聞かれると大いにそれは御座います(笑)!

では!

脱落

カネで何でも、企業でさえ買える世の中

前置き。前置きが大好きな私。

私の一連の記事では漫画「賭博黙示録カイジ」のセリフがよく引用されています。多重債務者時代、身に染みる言葉が多かったため。

カッコいいのでアニメの雰囲気をご紹介

さて同じ作者の福本伸行による「銀と金」という裏社会のマネーゲームに関する漫画があります。

こちらもカッコいいので実写版の雰囲気をご紹介

この漫画の中にこういったセリフがありました(ピッタリ同じではありませんが、主旨はそう):

この世の全てがカネで買えるのさ。そう、東芝とか聞いたことのある大企業ですら・・・。

なるほど。ここで、企業を買うってそもそもどういうこと? って考え込みました。

金で何を買うのか? この点は「コラム3: 金利って言っても見方による?」で考察しておりますので、ご興味がありましたらそちらも!

個人と会社に分けて考えます。

個人は主に「便益」や「快楽」を求めてショッピングします。チョコレート(商品)だったりマッサージ(サービス)だったり。

会社はさらなる金を生むためにショッピングします。チョコレートのメーカーだったら材料のカカオだったり加工するミキサーだったり。最終的にチョコを売ってさらに金を生むために何か買っています。ここで、チョコ本舗㈱という架空の企業を考えて以下色々説明したいと思います!

チョコレートのメーカー

こうやって材料を調達し、モノを作って、売って、そうやって地道に商売して金を儲けるためにショッピングする。これが普通です。

チョコ本舗社が近い分野のキャンディ商売もやりたいとする。その材料のペースト(?)や甘味料、専用のミキサーや切断機を買う(チョコレート用とはまた少し違う)。そしてキャンディを生産し、店頭で売るのが「普通」。或いは手堅い商売。

でも時間が掛かって面倒だ。だったら、手っ取り早く金を生んでる箱ごと買ってしまえ! 別のキャンディ・メーカーごとガサっと買ってしまえ!!

既にやっている所を丸ごと買ってしまえば手間が掛からない。今日にもキャンディ商売を始められる。

キャンディ・メーカーごとガサっと買ってしまえ

これがM&A。このせっかちがM&A(業界ではMAと呼びますが、これもせっかち)。コワい。オワリ。

いやまだか・・・。

ちなみに買われる方は「㈱おキャン」で。

ウソ。もちろんこちらも架空の企業です。

さて以下、M&A「そのもの」の観点と、その周りで「第三者として蠢く」投資銀行の観点で並行してこのせっかちの正体を見極めていきます!

M&Aって聞こえはいいけど(定義)

定義。定義が大好きな私。

M&Aって聞くと何だか響きだけはカッコいいけど、一体何の略なんだろう・・・。

M&Aって聞くと何だか響きだけはカッコいいけど、一体何の略なんだろう

投資銀行的には、一流校のMBA(ビジネススクール) > 一流インベストメントバンクでM&A(投資銀行業務の花形)というのが典型的なお決まりエリートコースになっており、単に典型的過ぎます。MBAとM&Aって似てる、って声もあります。ちなみに第一段階は大成功して第二段階目でこけてアル中の多重債務者になった人間を知っています(誰だ?)。

M&Aは「マージャー & アクイジシション」の略。何じゃそりゃ? マージャーが「合併」でアクイジシションが「買収」です。どっちもある会社が他の会社の支配権を握ることを指しています。

じゃあその二つはどう違うんだ? お菓子業界の例で。

チョコ本舗社がおキャン社を乗っ取って「吸い込んだら」、つまりおキャンという会社(商号)を無くし社内の一つの事業部門にしたら「合併」。

チョコ本舗社がおキャン社を乗っ取って「ぶら下げたら」、つまりおキャンという会社は一応残し子会社にしたら「買収」。

実質的にはどっちでもほぼ同じです。実際的に合併する場合も一旦買収してから改めて合体させるのでほとんどが初手は買収。ならAだけでなく何故M&Aと言うのか。単にカッコいいからでしょう。

何故M&Aと言うのか。単にカッコいいからでしょう。

ホントに大体同じか。合併したら商号 = ブランドが消えちゃうんでは? 味よりおキャンという商標名で(癖で)買っていたファンの消費者もいるんで・・・。いや、会社自体は消えても別にブランドだけ残すのは勝手です!

くっ付けた方が連携が緊密になる、というなら少し違う。被買収先にある程度経営の裁量権を残しておいてやるために(箱をそのまま分けておいて)子会社にしとく、というなら少し違う。それでも大所高所では支配しているので大体同じでは・・・と私は思います。

それが聞こえだけカッコいいM&A!

ガッツリ買うのがM&A

現代社会の会社はほとんどが所有権(オーナシップ)を示す「株式」を発行しています。発行しなくたっていいんですが。

株式は1枚でも100枚でも1,000枚でも何枚でもいいんですが、大体1枚に投票権が1つくっついています。

これを買いさらうことで会社を丸ごと買ってしまう。キャー。

会社の中で「役員の選挙」とか「何するか(経営方針)」を決める際に時々投票をします。この決議に過半を要する。つまり、発行している株式の半分超を買い占めればいつでもこちら思い通りになるので、晴れて買ったことになる。

決める際に時々投票

例を。私のような貧乏人でも東芝やマイクロソフトの株を買うのは勝手です。ここで、上場されている(一般に流通している)と買い易くはある。但し恐ろしい量が流通しているので、東芝の株を一株5,000円で3枚買ってもその会社を買った(支配した)ことにはならない! 3枚買うと1万5千円ぐらいですが、半分ちょい買おうと思うと1兆円弱掛かる。貧乏人の私の場合1万5千円でもかなりつらいので、東芝を買おうと思うと10億年掛かってもムリ。

何だか政治の選挙に似てますね。あなたの一票で国を変えよう! とかよく街頭演説で聞きますが、私が一票投じても何も、一切変わりません。私が7千万票ぐらい投じられるなら変わるかもしれん。同様、東芝を変えることも出来まへん。

さて、おキャン社は一株1千万円で10枚株券を発行していると仮定します。これが取り合えず妥当な価格(時価)だとします。チョコ本舗社がおキャン社を完全に参加に収めたければそのうち6枚はゲットしなければなりません! 最低6,000万円掛かりますよ!!

では5枚ではダメなのか? 投票の際「半々(タイブレークのにらみ合い。ギロリ。お前が譲れ!)」で割れるのでダメです。過半でないと支配出来ない。買ったことにならない。一般に、ギリで言うと50%と1枚必要です。このため、半分「以上」ではなく半分「超」と書きました。

支配している株主と、単なる一株主の違いをご説明します。おキャン社が高価な「新型ミキサー」の導入を検討しているとします。過半を握っている支配株主、つまり実質上のオーナー(会社でも個人でも)なら買いたまえ or やめとけ! と自分の一存で言えます。単なる一株主の場合(例えば1票だけ持ってる)、投票は出来ますが他の人次第になる。1票持ってる人が6人集まってもいということですが・・・。

支配している株主と、単なる一株主の違い

ここで脇道。奥の深い話を一つ。株価(額面価格)って意味が無い。どういうことか。おキャンの価値は1千万円 / 1枚 X 10 = 1億円です。総額1億円は所与だとします。発行株式が20枚なら1枚が500万円になるだけ。1枚なら1億円。よく「株式分割」する(株券の流通量を増やす)云々の話がありますが、単に「単位(一枚当たりの表示額)」が変わるだけなんで別に大した意味はありません。1,000円札二枚でも2,000円札一枚でも合計は同じです! 脇道にそれました・・・。

* 留意点

大体の議案は過半で通りますが、特に重要なものは2/3超が必要! と定款で定められている場合があります。重要な事業の一部門を不採算なので完全に閉じちゃう、とかです。これも何だか政治に似ています。国会ではそうですね。憲法を変えるのは過半でなく2/3でしょう。このため、1/3超を持ってると支配はしていないまでも「拒否権」があるとされます。重要な案件にはノーと言えるため。が、まず半分超あればまずヨシ、掌中にアリ、とします!

ヘルパー(この世で一番高いお手伝いさん)

さて、会社が他の会社を買うM&A。これは別に自社だけで全然出来ます。特にヘルパー、つまりアドバイザーを雇う必要はナイ。

現実の例ではユニクロが事業拡大にM&Aを多用しています(店舗を持ってる会社を買って看板を置き換える、等)が、内製でM&A執行部隊を持っており「案件のネタ探し」以外にあまり投資銀行を使うことはありません。

一方、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレー等の投資銀行はこれでガッポガッポ儲けている。やはりヘルパーもニーズがあるんだ・・・。

一体ウォールストリートや大手町に巣食うこのエリート証券会社達は何をしているのか?

投資銀行とはそもそも何でしょう。投資銀行、と聞くと「投資する」会社のように聞こえます。そうではなく、「投資させる」会社という方が正しい。つまり自分では投資せず(リスクを取らず)他人に投資をさせてフィーだけかすめとるのがソレ。ここら辺は「コラム4: 銭っこの話なのに何だかキレイ・・・」にも詳しく書いていますのでそちらもお時間があれば是非!

M&Aの場合では? まず、こういった会社がありますが興味はありますか? と誘って買わせ、成立したら時価総額 X% というような計算式で巨額の仲介手数料を取る、というのが一つ。これが「営業」です。

時価総額

「業務」的には、M&Aの交渉の際に買い手側か売り手側についてスキームや価格設定、交渉の代理などのアドバイスを「パック」で提供する(自分で営業した場合も、案件が決まっていてお願いされた場合も)。

法務面も見たり色々やるんですが、業務のメインは「価格の見極め」といくらで売り買いしましょか? という「相手方との交渉」です。基本、M&Aは当事者同士が合意すればいくらで売買しても自由ですので、とにかく額が大きくなるため本当にこの価格で妥当かしらん? という不安につけこんでヘルプする(エクセルをいじりながら相談に乗る)のが投資銀行です! クライアントに代わって相手方と交渉の場に出る(第三者の方がいい)ので弁護士に似たとこもあります。こうして、M&Aの世界では投資銀行 vs. 投資銀行という熱い交渉、いやそれは高いだろ! というような切った張ったの修羅場が現出することが多々あります。

エクセルをいじりながら相談に乗る

これが金融業界が格闘技に譬えられたりする所以です。アホくさ。

アホくさ、と言いながら私もそういうのが「カッコよさそう」なので突っ込んで、毎日徹夜でエクセルをいじるだけ(熱い交渉は上の人がやり、スタッフレベルは計算と資料作りだけです)で、燃え尽き症候群 > アル中(キャバ中) > 辞めて多重債務という地獄の道を辿りました!

採算、銭勘定

いくらで買うか、それが問題だ シェークスピア

これは、会社を買う側も、身売りする側も、クライアントのために全力を尽くすアドバイザーも気にする一番重要なポイントです。

おキャン社については一旦6,000万円と置きましたが、見立てによって8,000万円でも4,000万円でも構いません。妥結する値段で大きな差が出ます。

ちなみに、上場していると一応市場で価格が付いているので(それでも売買価格は当事者同士の自由ですが)目安がありますが、未上場だとそういった目安もないのでもっと五里霧中になります。このため、M&Aアドバイザーのお仕事って案外非公開会社の取引も多かったりします。つまり、目安が無いんで余計プロの財務マンに妥当な価格を「算定」してもらう(意見を聞く)必要がある・・・というような。第三者を雇うと社内外への価格の説明もラクになるって面もありますね。いや、この一流会社がきっちり計算してそう言ってるんで・・・。

おキャン社についてはマザーズ上場を検討はしているが、今んとこ未上場だとします。

で、どう決めんだ?

モノの値段ってのは難しいものです。チョコレート然り、マッサージ然り、骨とう品然り。経済学では「市場で揉まれて」平均値に落ち着く、とか言っています。実際はザックリ、適当なトコもあるんでしょうね・・・。

さて消費者の欲求を満たすためにあるこういった一般の商品やサービスの値段ですらどう決まるかはっきりしないのに、金を生むマシーンの値段をどう決めるのか?

理論的にはこちらの方が簡単かもしれません。900円分の金の卵を産む雌鶏がいるとします。産んだらすぐ死ぬ(肉は売れない)。これを800円で買ったら100円お得。1,000円で買ったら100円損。何だ、簡単じゃないか!?

簡単なのは、100%、絶対に900円の価値がある金の卵産むと確かな場合だけです。

この雌鶏が、300円分の銀の卵を産んで死ぬ、生まずに死ぬ、そういう他の二つの可能性もあるとしましょう。じゃあ分からねぇな。銀と金って漫画思い出すな。

雌鶏が、300円分の銀の卵を産んで死ぬ

ここで、確率が1/3(33.3%)ずつだと確信しているとします。ガチャみたいですが・・・。そうしたら中学で習った簡単な加重平均による「平均」(カッコよくは期待値と呼びます)を取ればそれが妥当なんでないか? この場合、900 X 1/3 + 300 X 1/3 + 0 X 1/3 で400円になります!

元投資銀行マンなんでエクセルでもやってみようっ!

  死産  
A ゲット ¥900 ¥300 ¥0  
B 確率 33.3% 33.3% 33.3%  
A x B 加重 ¥300 ¥100 ¥0 ¥400
          ↑計

 

なるほど~。投資銀行ってこういうことやってんだ・・・。

実はもっとお金の時間価値(金利の勘案)とかリスクとか色々ゴチャゴチャあるんですが、それはヨシとします。色々数字をいじっている、とだけこの稿では分かれば。

では買い手側のチョコ本舗社と売り手側のおキャン社の価格交渉をこの枠組みで。ちなみにチョコ本舗社には街角証券㈱がアドバイザーで付いておりエクセル計算を代行しています。おキャン社の方はエクセルに強い経理マンが自分で!

考え方として、おキャン社の「生涯収入(飴の売上)」と「生涯費用(材料と人件費とか」を考えます。生涯収入 - 生涯費用 = 生涯利益です。単位は千万円とします。

シナリオは同じく三つ。絶好調、まぁまぁ、どん底。

街角証券さんに代表されるチョコ本舗社側の試算:

  業容 絶好調 まぁまぁ どん底  
A 生涯収入 12.0 6.0 4.0  
B 生涯費用 7.0 3.0 4.0  
C=A-B 生涯利益 5.0 3.0 0.0  
D 確率 30% 40% 30%  
C x D 加重 1.5 1.2 0.0 2.7
          ↑計

 

ま、こんなとこが関の山か。なべて2千7百万円ってのがおたくの価値。おまけして3千万円出したるから、それで手打たんか? 身売りするなら潰れる前になるべくいい条件でしとくこった!

おキャン経理課長の言い分:

  業容 絶好調 まぁまぁ どん底  
A 生涯収入 20.0 15.0 10.0  
B 生涯費用 9.0 7.0 10.0  
C=A-B 生涯利益 11.0 8.0 0.0  
D 確率 60% 40% 0%  
C x D 加重 6.6 3.2 0.0 9.8
          ↑計

 

いやいや、御社何かとんでもない勘違いをされています。弊社の「堅い」事業計画、つまり控えめに見ても1億円の価値はありますね。こっちの方が妥当ですよ。自分の会社のことは自分が一番分かってます!

と、インプット次第で全然結果が違います。だから第三者のアドバイザーを巻き込んだ喧々諤々の交渉になるんですが・・・。果たして交渉は妥結するか?

* 留意点

この投資銀行の「エクセル地獄」にはとにかく色々あります。こちらは「シナリオ分析」と呼ばれるものの簡単な例で、一番分かり易そうなので例として採用しました。

実際には、「DCF」ということをメインにやります。時系列で利益を並べ、リスクを加味した金利(割引率)で今の価値に割り戻して合計する、云々です。意味不明。

DCF

それに対し、このシナリオ分析をかぶせたり・・・。

ここではDCFのテクニカルな面を説明するのが目的ではなく、

  • M&Aではとにかく色々と数字をいじりまくる。
  • インプット(前提)次第で結果は大きく変わる。未来のことなんで実は誰も分からない。
  • そのエクセルいじりをめぐって喧嘩沙汰の交渉がある。

とだけご理解頂きたかったものです。DCFを説明するとそれだけで記事五本分は必要でして・・・。コラムなので一本に収めたくこちらを紹介しました!

シナジー

さらに計算と交渉をややこしくする要素を紹介します。読者にちょっとは混乱してもらう目的です!

M&Aの醍醐味、或いは「投資銀行の言い訳」として「シナジー」という概念があります。二社が結婚することで相乗効果が生まれるだろう、というものです。

例で。チョコ本舗社とおキャン社は作っているお菓子の種類は違うながら、お菓子はお菓子なので同業者とも言える。ここで、生産工場の施設で共有出来る部分(材料を溶かす工程等)があり、その分を省いてコストダウン出来る!

それが生涯利益に直すと4千万円ぐらいにはなるんでは? とか。この分をお互いに分けっこして価格計算に反映しよう!

とか。たわ言の場合も多い。

勝者の呪い

ディール

M&Aにおいては買う側の方がイケイケ感があり、勝ち組感があります。

ところが、統計的には「高値づかみ」が多く、結果的に(事後的に)買う側が負け組になることが多いそうです。

どうしてでしょうか?

一つには、上記のシナジーを実際に実現するのは容易ではなく、にも関わらずそれを高く見積もり過ぎてしまった! となる場合です。

お菓子業界の例で。

二社は、中間ぐらいを取って本体価格は大体7千万円でどうか? と長い交渉の末落ち着きました。

ただ、シナジーが「当然」あるだろうし、4千万円のうち半々で2千万円載せて9千万円にしてよ、と交渉上手の経理課長の口車。

チョコ本舗の方はイケイケ・押せ押せムードなので、おだてられて(うちの老舗を今後お願いします!)そうだなぁ・・・ヨシ! それで手打つわ!! とうなずいてしまいます。

ヨシ! それで手打つわ!!

街角証券の方は手数料商売(成立したら500万円)なので、お客さんがOKなら別に構わない。ディールが成立した後は知らんぷり。

さて時は過ぎ・・・本体価格の7千万円は結果的に大体当たっていたが、シナジーなどさほど実現出来ず、結局2,000万円損してた・・・。

呪いですね~。

投資銀行マン本人

億単位の年収を得て勝者になる人も、脱落して呪われる人もいます。一番恐ろしい呪いを受けたのがかくいう私。多重債務者になりました。

呪い自体については本編三部作を是非!

法的債務整理との関係

エリート投資銀行マンになろうとして失墜し、多重債務者になって法的債務整理に頼らざるを得なくなった人間がいる。だからM&Aと関係ある。

かなり無理があります。程度がひどすぎるので。

でも燃え尽き症候群が飲酒やギャンブルにつながり、挙句の果てはカードローンに悩むことになる、というのはあり得ます。エリートの世界には必ず勝ち組と負け組がいるので。私は負け組。

また一連のコラムのテーマですが、「マネーゲーム」はよろしくない、お金だけが全てでは無い(だからこだわり過ぎるのはやめよう)! という私当人の主張があります。こだわるとこのように借金に呪われたりするので・・・。

マネーゲーム

少し投資銀行のフォローもしておきます。

単に人につかませてフィーをかすめ取るだけの「虚業」なのか? 彼らの主張では「資本の社会的な流通を媒体として円滑にしている(自分らがいないと社会の血流であるマネーが流れなくなる・流れが滞る)」とか言っています。何のこっちゃで、言い訳じみてますがそういう面もあるかもしれません。

敗残者の弁、負け惜しみだけでアンチM&Aと思われるのもどうかと思い、少しだけ弁護してみました!

でも基本はアンチですよ!

まとめ

  • M&Aとは自社でゼロから新事業を立ち上げるのが面倒な場合、もうやってる会社を手っ取り早く買っちゃうこととかを謂う。
  • 株式の半分 + 1票は最低さらわないと買ったことにならない(多数決の原理で言うことを聞かせられない)。
  • 会社丸ごと買うんでかなりお高い。
  • ここで値段が大問題になる。
  • そこへエクセルいじり業界とも言える投資銀行が「プロ」として顔を出し、交渉までしてくれる。終わったら知らんぷり。
  • 計算は前提次第で、エクセルの「体裁」や計算の複雑さによらず案外いい加減。
  • 結局当事者同士の決めの問題。
  • シナジーっていうあやしい概念がある。
  • 買う側に攻め感があるが、実は後でしまったとなることが多い。
  • カッコいいと思って投資銀行業界に殴り込み、みじめな人生を送る人間もいる。誰だ?

 

この記事を書いたのは
編集部キャップ/元・タジュウ
編集部キャップ/元・タジュウ
日本国内某一流大学を卒業後、米国一流校でMBAをトップクラスの成績で取得。Chartered Financial Analyst, CFA/日本証券アナリスト協会認定アナリスト, CMA取得済み。金融に関しての知識は世界トップクラス。ネイティブ並みの英語とタイ語能力を有す。大手町大手監査法人でM&Aアドバイザー職を経て右往曲折(紆余だけでなく。詳細は記事をご覧あれ)。現在は債務整理中央事務局で編集キャップとして活動中。コップンカップ!
私が監修しました
宮地祐樹
ひかり総合法律事務所
宮地祐樹 弁護士
所属:日本弁護士連合会/第二東京弁護士会/日本スポーツ法学会会員。調査案件:ベルマーレコンプライアンス委員会委員。経歴:早稲田実業学校高等部/早稲田大学法学部/北海道大学法科大学院/あさひ法律事務所。元Jリーグ下部組織でのプレー経験がある法曹界では珍しい異色の経歴を持つ。好きな色は青。幼少期から体育会系の世界で揉まれ育ち、人情に厚いながらも冷静沈着な仕事のスタイルが好評を得ている。訴訟案件を多く抱えながらも交渉案件も得意とし、日々、金融機関との交渉に励んでいる。